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現経-応用4

次のキーワードを説明しながら、経営戦略の必要性と実際に行われている戦略を300~400字で答えなさい。

キーワード:

環境適応、多角化戦略、競争戦略、コア・コンピタンス、(知識創造理論、RBV理論)

  

現在の市場環境はドッグイヤーと呼ばれるほど激変を極めており、企業が環境変化に柔軟に対応して発展していく環境適応の為には、有効な経営戦略が必要である。経営戦略には、既存事業の周辺事業分野、または新たな事業分野に進出し、成長・拡大を図る多角化戦略や、自社の市場地位を強化し、有利な位置を確立する競争戦略がある。戦略策定にあたっては、他社に真似できない核となる能力である、コア・コンピタンスを経営戦略上の根源的競争力として重視すべきである。競争戦略の3つの基本戦略のうち差別化による成功事例として、小型複合機に特化して世界のSOHOユーザーに拡大して成功したブラザー工業がある。標準品の半値という低価格化、小型の複合機に特化させてSOHOユーザーに浸透させた結果、欧米でHPにつぐ第2位のシェアを獲得するに至ったのである。(357文字)

 

企業を長期的に存続させ、成長に導いていくためには、

業界内の競争の激しさを左あ、右する5つの要因、3つの基本戦略<コスト・リーダーシップ、差別化、集中>)→コア・コンピタンス(他社に真似できない核となる能力のこと 顧客ニーズ認識力、組織学習能力、社外資源活用力

 

最近の戦略ケースの中から、差別化して成功した事例を探すと、「ミシンから情報機器への事業転換、崖っぷちからのV字復活をとげたブラザー工業」(会員版戦略ケースはこちら)があります。このケースで描かれているブラザーの成長の軌跡を要約すると、
北米市場にFAXを投入、低価格化(標準品の半値)によって一気にシェアを拡大
小型の複合機に特化させてSOHOユーザーに浸透、欧米でHPにつぐ第2位のシェアを獲得
販売台数を拡大して消耗品で継続的に儲ける
北米、欧州、アジアと地域を拡大し海外で2桁成長、海外売上比率が65%を占める
ということです。
 はじめは低価格ということでSOHOユーザーに入ったと思われますが、そのニーズを深掘りして、小型複合機に特化して世界のSOHOユーザーに拡大して成功したと解釈できます。また不況の日本市場でなく90年代中ごろに海外市場で展開したことも成功の条件になっていると思われます。この成功によってミシンのブラザーからインフォメーション&ドキュメントカンパニーへと変貌を遂げました。今ブラザーは、この勝ちパターンを国内に展開しようとしていますが、成果はこれからです。  

 

ブラザー工業(以下、「ブラザー」)が2003年3月期の連結決算で過去最高の売上高(3,900億円)と純利益(150億円)を達成する見通しである。売上高は1990年代半ばから過去最高を更新し続けており、株価は2002年11月の939円をピークに一度は700円を割ったものの再び上昇傾向にあり、2003年5月現在では800~850円台を維持している。2000年には200円を割り込んだ株価は約2年で4.5倍になり、その後も高水準で推移している。
 ブラザーといえば「ミシンと電子タイプライター」のイメージが強く、成熟企業と見られがちである。しかし現在はファクスやプリンタ、さらにこれらに複写やスキャナー機能を付加した複合機などを稼ぎ頭とする情報機器メーカーである。1908年に名古屋のミシンメーカーとして創業した名門企業ブラザーは、創業事業の市場衰退や多角化の失敗による10年以上にも及ぶ長期の業績低迷という崖っぷちから、事業構造の転換に成功することで復活を果たした。最近20年間におけるブラザーの苦境から復活までの軌跡について考察する。

 ブラザー工業は、1908年名古屋で「安井ミシン商会」として創業、ミシンの生産技術を基に多角化して成長していきます。1954年アメリカ、1958年欧州に販売拠点を設立してミシンを販売、1961年欧文タイプライターの生産開始、素早い欧米展開によって、タイプライターのブランドとして浸透、71年世界初の高速ドットプリンタの生産開始など技術主導で製品多角化、海外展開によって成長をとげた企業です。
 しかし、その過程では、電卓から洗濯機、冷蔵庫と総合家電メーカーをめざして製品多角化を図りますが、80年代後半の円高不況によリ業績が悪化、多角化製品の多くを撤退していきます。その結果、タイプライターから、ファックス、プリンタをコアとした現在のインフォメーション&ドキュメントカンパニーに収斂していきます。前述したように、典型的に、SOHOユーザーというターゲットに向けてFAXとプリンタなどの小型の複合機に重点化して差別化していると判断できます。

 

■経営戦略

現在多くの組織は経営環境の激変に直面しています。

 急激な技術革新
 顧客ニーズの多様化
 グローバルな競争激化
 異業種からの新規参入
 製品ライフサイクル短縮化

このような状況においては既存の業務枠組みの盲目的な維持は、組織にとってその生存基盤を破壊する最も危険な選択肢であるかもしれません。

今や組織存在意義の根幹である理念・ミッションの再吟味とこれをベースにしたビジョンと戦略の策定により、環境変化へプロアクティブに対応することこそが、組織の存続・発展のための最も確実な手段となってきています。

 

 経営戦略のパターン
経営戦略の各要素を吟味して策定される経営戦略は次のように分類することが出来ます。

(1)全体戦略と機能別戦略
経営理念と企業ビジョン実現を目指して経営環境変化に応じて策定される企業全体の戦略が全体戦略です。

 成長戦略  市場参入戦略
 多角化戦略
 撤退戦略
 戦略提携
 
 競争戦略-M.E.ポーターは低コスト、差別化、製品集中をあげている  CS戦略
 事業ミックス戦略
 製品差別化戦略
 価格戦略
 
 組織戦略-成長戦略、競争戦略を支える組織体制  組織編成
 職務分掌
 分社経営(事業部制、カンパニー制、持ち株会社制度)
 マトリクス組織
 プロジェクトチーム
 企業内起業家
 

全体戦略に基づいて、各部門が実際にどのように行動するのかをより具体的に指示するものが機能別戦略です。

 購買戦略
 生産戦略
 販売戦略
 人事戦略
 財務戦略
 IT戦略

(2)市場における地位による戦略の違い
それぞれの市場においてどのような地位を占めるかにより有効な戦略は異なります。

 リーダー戦略  シェアを確保することによりコスト優位に立つ低コスト戦略
 全方位型で出来るだけ多くの顧客を取り込む
 フルカバレッジと周辺需要の拡大
 
 チャレンジャー戦略  機能・イメージ・デザインなどでリーダーに対する限界的差別化を図る差別化戦略
 
 フォロワー戦略  模倣により開発費を抑える低コスト戦略
 
 ニッチャー戦略  独自ノウハウによる特定ターゲットに対する集中優位を創り出す市場細分化戦略
 

知恵を絞ればいろいろなアイデアは出てくるものです。(社会的規範との整合性はきっちりと詰めないと手痛いしっぺ返しのリスクが出てきますが・・・)。

 

「経営戦略とは何か」との問いに対しての返答は、経営戦略の全体像が非常に大きな概念であるがゆえに、その説明は難しい。
経営戦略とは、「(企業が)明確な目的のもと、現状を分析し、将来に向けた自社(企業)の進むべき方向性を明示したもの」といえる。
経営戦略は、「環境適応のパターンを将来志向的に示す構想であり、企業内の人々の意思決定の指針となるもの」と定義されることもある。
誤解を恐れずにいうなれば、経営戦略とは、企業の進むべきシナリオを明示したものである。
経営戦略というシナリオには、「事業環境に如何に適合していくか」、「競合他社に対する自社の優位性をいかに確立していくか」、「目指すべき成長の方向性をいかに示すか」、「経営資源を如何に確保し、有効に配分するか」の4つの項目を明示しなければならない。
この4つの項目を明示していない経営戦略は、戦略とは呼べない。

 

 

以下メモ

戦略がなければ多くの人々の活動を一定の方向に向け、協働を促すことはできない。さらに、たとえ戦略があったとしても、その戦略と環境との関係が適切なものでなければ、企業の長期的な存続と成長は期待できないのである。(157ページ)

 

■環境適応

今日、企業を取り巻く環境はめまぐるしく揺れ動いている。急速な技術進歩、消費者ニーズの多様化や加速的な変化、国際化の一層の進展など、いずれをとっても過去とはくらべものにならないほどのスピードで環境は変化している。(157ページ)

 

■多角化

既存事業とは基本的に関係のない新たな事業分野に進出することで、事業拡大を図る戦略のこと。コングロマリット化ともいう。

既存事業の周辺事業分野、または関係のない新たな事業分野に進出することによって企業の成長・拡大を図る戦略。

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多角化戦略は、成長戦略の1つで、既存事業との関連度による分類(関連型と非関連型)が可能です。


関連多角化のシナジー効果
関連多角化は、既存事業のコア・コンピタンス(技術やノウハウなど)を共有することで、既存事業の周辺で事業を多角的に展開していく戦略です。事業規模の拡大による生産効率の向上や、研究開発・生産技術等の有効的活用という利点を持っています。
非関連多角化は、既存事業とは関連性がない(もしくは低い)事業に進出することで成長していく戦略です。複数の事業を持つことによるリスク分散という利点を持っています。
多角化と企業業績の関係について、数多くの研究が行われていますが、R・P・ルメルトの研究をはじめ、多くの実証研究では、既存事業との関連性が高い事業へ多角化するほうが、既存事業との関連性が低い事業へ多角化するよりも、シナジー(相乗)効果により高い収益性をもたらすことが示されています。


コア事業に集中
規制緩和にともなう市場変化やグローバル化により事業環境が厳しさを増す中で、各企業は非関連多角化による分散的投資から、コア事業への集中へと軸足を移してきています。選択と集中を掲げ、自社のコア事業との関連性が低い事業を売却し、売却資金をコア事業の強化及び周辺事業への投資(関連型多角化投資)にあてることで、コア事業を中心とした事業展開に移行する企業が増えてきています。


■競争戦略

事業においていかに自社の市場地位を強化し、有利な位置を確立するかを説いた戦略です。1980年代にマイケル・E・ポーターが発表した『競争の戦略』や『競争優位の戦略』(ダイヤモンド社)によって、広く用いられるようになりました。


3つの中心概念
 マイケル・ポーターの競争戦略は、大きく3つの中心概念から構成されています。1つ目は、長期的な利益の面から見た様々な業界の魅力を明らかにするため、業界内の競争の激しさを左右する5つの要因((1)新規参入の脅威、(2)買い手の交渉力、(3)売り手の交渉力、(4)代替製品・サービスの脅威、(5)業界内の既存競争業者間の敵対関係)を示した「5つの競争要因」フレームワークです。
 2つ目の中心概念では、最も広い意味で戦略を考えると、企業が5つの競争要因にうまく対処し、競争に勝ち抜くための戦略として、3つの基本戦略(コスト・リーダーシップ、差別化、集中)があることを示しています。この3つの基本戦略のうち、2つ以上を採用すると中途半端な状態になり、顧客を失う可能性が高いため、1つの戦略に絞り込むことを奨めています。
 3つ目の中心概念では、企業の競争優位の源泉を見出し、3つの基本戦略から1つの戦略を選択するには、企業が顧客に価値をもたらす一連の活動である「価値連鎖(バリューチェーン)」を分析する必要があることを示しています。一般的な価値連鎖は、5つの主要活動(購買物流、製造、出荷物流、マーケティング・販売、サービス)と4つの支援活動(調達、研究開発、ヒューマンリソースマネジメント、事業インフラ)で構成され、個々の事情に即して活動を細分化することができます。


競争戦略の貢献と限界
 競争戦略の出現により、業界の魅力度や業界内の競争優位を見出すための分析フレームワークが提示され、戦略の基本理解を深める1つのアプローチが提供されています。
 一方で、網羅的かつ包括的な戦略の捉え方である3つの基本戦略は、市場環境の変化に応じた柔軟な戦略形成・実行において適応しにくい可能性があるといえます。

■コア・コンピタンス

コア・コンピタンスとは、G・ハメルとC・K・プラハラードの著書『コア・コンピタンス経営』(日本経済新聞出版社、1995年)によって広められた概念で、他社に真似できない核となる能力のことです。この著書では、「顧客に特定の利益を与える一連のスキルや技術」と説明されています。

コアコンピタンスをとらえるアプローチには、次の2つがあります。

 技術/特許、ブランド力、販売チャネルといった静的あるいはハード面重視
 顧客ニーズ認識力、組織学習能力、社外資源活用力といったソフト面重視

環境の流動化に伴ない、新しいコアコンピタンス(ハード面)を作り上げていく源泉である後者の側面により大きな注目が寄せられています
 


過剰な現実主義の危険性
 1980年代まで戦略仮説の分析は、目に見える成果・製品を対象にした簡便な分析ツールの活用が主流でした。しかし、過去のデータや現在の業績に注目しているだけでは、未来における競争優位の確立を十分に議論できないことが懸念されます。現実主義に陥りすぎると、目に見える範囲に限定された製品の市場シェアや利益など、現業そのものに対する分析に偏ってしまいます。


未来への挑戦が成功の原動力
 コア・コンピタンスの考えは、このような問題点を解消するものです。
 不連続に変化する未来において強い競争力を保ち続けるためには、コア・コンピタンスを全社的に認識し、その強みから成果を生み出す組織学習が大切になります。精緻な分析を行い、綿密な計画を立てることよりも、立案された計画を全社員が正しく理解し、情熱と知的エネルギーを持って未来に挑戦することのほうが成功を生み出す原動力となります。核となる能力を磨き上げるために組織全体で学習を繰り返すことで、環境変化にも柔軟かつ大胆に対応できるのです。
 事業多角化の際にも、自社のコア・コンピタンスを正しく認識することが重要です。コア・コンピタンスという自社固有の経営資源を明らかにすれば、その資源を梃子(レバレッジ)にして幹となる事業を展開することや現状を前提としないストレッチ目標への見通しを立てることも容易になるでしょう。

 

http://home.att.ne.jp/sea/tkn/Issues/Issue-MgmtStrategy.htm#1

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